防災計画書の作成が必要な計画の場合は、建築基準法や消防法で定められた内容以外の対応を求められる場合があります。普段と同じ考え方で設計を進めると、思わぬ所で計画の変更が生じる場合があります。そのため、ここでは防災計画書作成が必要な計画の設計を行う場合に考慮すべき点についてまとめてみたいと思います。
防災計画書では、建築基準法や消防法で定められた以上の指導がある場合があります。
そのため、事前に行政・消防及び評定を受ける審査機関と協議を行い、大きな計画の変更が出ないようにしておく必要があります。ここでは、事前に確認をしておいた方が良いと思われる項目を記載します。
ただし、計画によって確認すべき項目も変わってきますのでご注意ください。
・評定委員会、協議会及びその他防災計画書に係るスケジュールについて
・避難計算を行う必要があるフロアの確認
※下記のようなケースは避難計算が不要となる場合があります。
→共同住宅やホテルの基準階
→明らかに安全性が高いと考えられる避難階
(ただし、多人数が利用する居室がある場合には少なくとも居室の避難だけは行う必要があります。)
→病院等の用途で、スプリンクラーなどの自動消火設備、水平避難区画、籠城区画がある場合
・排煙設備の計画について
(機械排煙、自然排煙、または告示で規定除外している箇所)
・その他計画上確認が必要な項目
・計画される建物の管轄となる消防署がどこかについて
・消防隊の進入経路について
・バルコニー計画について
(バルコニーの設置箇所や有効幅員等)
・電気設備、機械設備の計画について
・スプリンクラー・連結送水口の計画位置が問題ないかについて
・消防活動空地が必要な場合に、その計画内容が問題ないかについて
・消防水利の計画について
(防火水槽の考え方や公設消火栓の位置や管径等)
・防災センターの計画について
(外部からの出入り口の有無や、避難階以外の階に防災センター機能がある場合の取り扱い等)
※上記は防災計画書上の防災センターについての内容で、必ずしも消防法上の防災センターと一致するものではありません。
・その他計画上確認が必要な項目
・評定委員会、協議会及びその他防災計画書に係るスケジュールについて
・避難計算を行う必要があるフロアの確認
・安全区画の計画について
・防火防煙区画の計画について
・排煙設備の計画について
・防災センターを中心とした防火管理体制について
・弊社の防災計画書作成着手前までにプランは確定させる必要があります。
(一般的には、大阪であれば消防下見資料提出、その他であれば行政確認用資料提出の1ヶ月前程度)
防災に係る設備関係の図面も必要になりますので、そちらも先行して作成する必要があります。
※業務スケジュールの詳細については業務フローを参照ください。
・第一次安全区画、第二次安全区画、避難階段、防災センターの範囲を明確にする必要があります。
基本的に安全区画がきちんと形成されている計画としてください。
・安全区画は壁天井の内装を下地仕上共に不燃とし、自然排煙または機械排煙としてください。
(一般的には告示1436号による排煙設備規定の除外することはできません)
・安全区画に面する火災室の扉は常時閉鎖式又は随時閉鎖式の不燃扉としてください。
・避難経路や送水口、非常用進入口の位置を明示するようにしてください。
・行政によっては指定の凡例がありますので、それに合わせた表記としてください。
・防災計画書作成時には、その階にいる避難者が階段室内まで避難できるかを確認する方法として、「新・建築防災計画指針」に基づく避難計算を行う必要があります。
避難計画の結果によってはプラン変更が必要となることもあるので、設計の早い段階から検討しておく必要があります。
※計算方法の詳細については「避難計算の考え方」を参照ください。
・防災計画書作成時には、維持管理の形態やその方法について明示する必要があります。
防災センターの運営体制やその建物の予防、点検、消防訓練の詳細についての情報が必要になります。
・屋内廊下部分を安全区画とし、自然排煙または機械排煙としてください。
・住戸(客室)内を告示1436号により排煙規定の除外をする場合、住戸(客室)と廊下間の扉上部に防煙垂れ壁を確保する必要が出る場合があります。
・食堂やラウンジ等の避難人数が多い室がある階は、避難計算の結果によっては建築基準法で求められる以上の階段を設置する必要が出る場合があります。
・病棟部については、一つの階を複数のゾーンに区画する水平避難区画を行うことが避難計画上は非常に有効です。
・手術室等のように避難自体が困難な部分は、他の部分からの出火の影響を受けないような独立した区画である籠城区画を行うことが避難計画上は有効です。
・ナースステーションやデイルームについても、防火区画や不燃区画をするように求められる場合があります。
・取り扱いは運用面も含めて事前協議をしておく必要があります。
・貸し事務所ビルの場合は、事務室に想定される間仕切りパターンすべての避難計算を行う必要があります。
・大会議室や集会場等の避難人数が多い室がある階は、避難計算の結果によっては計画していた内容以上に扉又は階段等を設置する必要が出る場合があります。
・防災センターは避難階もしくは避難階の直上・直下に設置してください。
また、耐火構造の壁で区画、扉は防火設備とし、自然排煙又は機械排煙としてください。
・避難経路、消防隊進入経路及び経路途中の扉の施錠状況が明快な計画とする必要があります。
・消防活動空地に架空線がある場合は架空線の所有者と事前に協議する必要があります。
(協議が必要と指導される可能性があります。)
・消防や行政の事前審査があった上で、第三者による評定委員会による審査を受ける必要があるため、他の行政の場合よりも評定書が交付されるまでの期間が長くなります。
・確認申請の本申請提出前までに防災評定書が発行されている必要があります。
→ 業務スケジュールの詳細については業務フローを参照ください。
・大阪府内建築行政連絡協議会の定める「高層建築物等の防災計画書の取扱い要領」に基づいて、防災計画書を作成する必要があります。
・ホテル用途の場合は、連続したバルコニーが必要になる可能性があります。
(幅員や全周バルコニーが必要かは要協議)
・神戸市の防災評議会による審査を受ける必要があります。
・確認申請の本申請提出前までに防災評定書が発行されていることが望ましいです。
→ 業務スケジュールの詳細については業務フローを参照ください。
・神戸市防災計画書作成要領に基づいて防災計画書を作成する必要があります。
・ホテル用途の場合は、連続したバルコニーが必要になります。
あーかいぶphp 避難計算の考え方「新・建築防災計画指針」において建築物の避難安全性を評価する手法として避難計算という手法がありますが、ここではその役割や考え方、注意点について解説します。
避難計算とは、ある階を出火階とみなし、その階にいる人々の全員が階段室内まで避難する状況を予測し、これによって建築物の避難安全性を検討評価するものです。
避難計算の目的は設計者に「避難動線」について考えさせることにもあるので、単に評価基準を適合させるだけではなく避難者の流れに無理のないプランを検討し、合理的な避難動線を設計するように工夫する必要があります。
避難計算では3種類の避難時間を求め、それぞれに対する許容時間と比較評価する必要があります。
また、避難経路上の混雑状況も予測し、廊下や附室がそこで滞留する人々を無理なく収容できる広さが確保されていることを確認する必要があります。予測する避難行動は全員がその階から退去するまで、すなわち最後の避難者が階段室あるいは屋外に逃げ込むまでの間が対象となります。
避難計算は以下の手順で行われます。
①各階ごとに避難対象人数を求め、避難計算対象階を選定します。
②避難計算の対象となった階について次の評価を行います。
a)居室避難の評価:各居室について、そこが出火室となった場合の避難時間を求め許容時間と比較評価します。
b)階避難の評価:その階の一つの居室を出火室とし、階全体の避難者の流れを設定し、避難時間と避難経路上の滞留人数を求めます。
求める時間には「階避難時間」と「廊下避難時間」とがあり、それぞれ許容時間と比較します。
また、滞留人数についても必要な滞留面積が確保されているかを確認します。
・火災が発生した場合にその居室の全員が室外に避難を完了するまでの時間を求め、許容避難時間と比較評価します。
原則として各居室ごとに算出し評価する必要があります。
※居室避難時間は、避難対象人数や扉の数・幅・位置等によって決まります。
※居室許容避難時間は、室面積によって決まります。
・大会議室や集会場等の避難人数が多い室の場合は、計画していた内容以上に扉を設置する必要が出る場合があります。
・病院等のような歩行速度を遅く設定する必要がある避難弱者が利用する施設におけるリハビリステーション等のような室面積が大きい室の場合は、歩行時間が長くなるためクリアが難しい場合があります。
・200㎡を超える居室は、原則として最大幅の扉の一つを無いものとして計算する必要があるため、クリアが難しい場合があります。
・廊下等の第一次安全区画において、その部分を避難者が利用している時間帯の長さ。
すなわち、その階の廊下に最初の避難者が入ってから最後の避難者が階段室あるいは附室に逃げ込むまでの時間を求め、許容避難時間と比較評価します。
各階段への避難経路ごとに評価する必要があります。
※階避難時間は、該当する階段へ避難する避難者数やそこに係る居室・廊下の形状、扉の幅等によって決まります。
※階許容避難時間は、その階の全ての居室及び廊下の面積によって決まります。
・階の床面積が小さいフロアは廊下許容避難時間が短くなってしまうため、クリアが難しい場合があります。
・病院等のような歩行速度が遅く設定する必要がある避難弱者が利用する施設は、廊下避難時間が長くなる場合があり、クリアが難しい場合があります。
・面積の大きい室と小さい室が混在している計画で、面積を大きい室を出火室として計算する場合は、クリアが難しい場合があります。
・火災が発生したときから最後の避難者が階段あるいは附室に逃げ込むまでの時間を求め、許容避難時間と比較評価します。
階段への避難経路ごとに評価する必要があります。
※廊下避難時間は、該当する階段へ避難する避難者数やそこに係る居室・廊下の形状、扉の幅等によって決まります。
※廊下許容避難時間は、その階の全ての居室及び廊下の面積によって決まります。
・廊下避難に同じ。
・廊下や附室における最大滞留人数を算出し、この人数が当該廊下・附室に収納可能かどうかを評価します。
※必要滞留面積は、当該廊下・附室に滞留する最大の人数によって決まります。
※滞留可能面積は、当該廊下・附室の実際に滞留することが可能な内法面積です。
・共同住宅やホテル等において、第一次安全区画となる廊下等の面積が非常に小さい場合は、クリアが難しい場合があります。
・安全区画となる廊下等の途中に扉がある場合は、そこで滞留が発生してしまう場合があり、クリアが難しい場合があります。
あーかいぶphp