避難安全検証法(ルートC)の考え方

避難安全検証はルートB以外にもルートCによる検証を行うことが出来ます。
ここではルートCの考え方の概要及び、有効なケースはどのような場合かについて解説します。
合わせてスケジュールについても記載していますので、そちらも参考にして頂ければと思います。

避難安全検証(ルートC)とは

避難安全検証(ルートC)は、建築基準法施行令及び告示で定められた方法を用いて検証する避難安全検証法(ルートB)以外の方法を用いて、建築物や階が避難安全性能を有することを確認する方法になります。
なお、告示で定められた検証法以外の方法を用いて避難安全性能を有することを確認するためには国土交通大臣の認定を受ける必要があります。

図版

避難安全検証(ルートC)の検証方法は、性能設計の考え方や検証式が告示で示されている避難安全検証法(ルートB)とは異なり、合理的な根拠を示すことができれば、告示によらない方法を用いることができます。
そのため、コンピュータを利用した詳細なシミュレーションによる煙流動性状や避難行動の予測による高度な避難安全検証を行うことで、より自由な建築空間を実現することも可能になります。

ルートCでよく使用される計算手法

ルートCで用いられる特殊な計算手法は、計画毎に適した手法を選択する必要があります。
一般的には、居室避難の煙降下時間の算定時に用い、その他の各時間の算定に関しては告示式(ルートBの考え方)を用いて算定を行うケースが多いです。

考え方の例

  避難終了時間 煙降下時間
避難開始時間 歩行時間 扉通過時間
居室避難 告示式 告示式 告示式 特殊な計算手法
階避難
全館避難
告示式 告示式 告示式 告示式

ルートCでよく使用される計算手法

①二層ゾーンモデル

二層ゾーンモデルとは、火災時に温度の高い上部層と相対的に温度の低い下部層が存在すると仮定しモデル化を行う概念になります。
代表的なものとして、火災現象を構成する多くの要素(上下層の質量、エネルギー、温度、化学種の濃度、圧力収支の時刻毎の変化等)について、煙流動解析予測計算プログラム[BRI]を用いて検証を行う手法等が挙げられます。

上記手法を用いることによって、例えば、告示式では対応できない複雑な吹抜部分等を含んだ建物の検証や、告示式(ルートB)には含まれない要素を考慮した上で検証を行うことができるようになります。

②簡易二層モデル

告示式の場合は、計算を簡易的にするため発熱速度は一定として設定しているが、実際の煙の発生は時間と共に変動することになります。
そこで、簡易二層モデルと呼ばれる火災の成長状態に応じた評価を行うことができる計算式を用いることで、より実態に即した煙降下時間を算出することができるようになります。

ルートCを使用することが効果的なケース

避難安全検証(ルートC)が有効なケースは幾つか考えられますが、大規模な吹抜空間を有する計画で竪穴区画規定の除外を行いたいケースで有効になる場合が多いです。
また、その他にも特殊な計算式の特性を活かしたより実態に即した検証を行うこともできます。

多層吹抜空間のあるショッピングモール

ショッピングモールのエントランス等の多層の吹き抜け空間において、吹抜部分を竪穴区画で区画したくないような場合、下図のような範囲を一体的な室として検証を行い避難安全性能を有することを示すことで、不要なシャッター等の無い開放的な空間を実現することができます。

マテハン設置のため上下階に吹抜けがある流通加工場

流通加工場等でマテハン設備が床を貫通して設置しなければならず、区画の形成も困難であるような場合、下図のような範囲を一体的な室として検証を行い避難安全性能を有することを示すことで、効率的なマテハン計画を行うことができます。

より実態に即した検証(煙暴露の検討)

より実態に即し、多くの要素を考慮することができる計算手法の「二層ゾーンモデル」を用いることで、煙層温度やCO2濃度の検討も行うことができます。
そのため、煙に巻かれてしまうような結果になったとしても、煙層温度やCO2濃度が基準値を下回っていることを検証することで安全性を示すことができます。

より実態に即した検証(小規模室の場合)

より実態に即した火源を考慮した計算手法である「簡易二層モデル」を用いることで、初期の発熱速度を抑えた検討をすることができます。
そのため、ルートBでは天井高さをかなり上げたり複数の扉を設置する等の対策をしなければクリアしないような小規模室の検証の場合でも、より簡易な対策でクリアすることができる場合があります。

ルートCのデメリット

・大臣認定を取得するため、少なくとも半年程度はスケジュールが延びることになる。

・ルートBと比較しても、更に計算が複雑になり手間が掛かる。

・大臣認定の再取得に非常に手間が掛かることから、計画途中のプラン変更への対応や、竣工後のテナントの入替や室内レイアウトの変更に制約が出る場合がある。

大臣認定を受けるまで

避難安全検証(ルートC)により避難安全性能を有することを確認するためには国土交通大臣の認定を受ける必要がありますが、ここで大臣認定を受けるまでの一般的な流れをご紹介します。

まず、評定機関による性能評価審査を受けて「性能評価書」を発行してもらう必要があるため、指定の評定機関に申請を行います。
月に1回開催される性能評価委員会で審査が行われ、審査が終了すると「性能評価書」が交付されます。
その後、国土交通省に大臣認定の申請を行い、審査を経て認定された時点で「大臣認定書」が交付されることになります。

※上記業務フローは標準的な場合を想定したスケジュールとなります。
物件の規模や内容、または評定機関の委員会の日程や国土交通省の審査時期等によっても必要な期間は大きく変わります。

あーかいぶphp 検証法のメリット・デメリット

なんのために避難安全検証法を適用するのか、避難安全検証法を適用することによってどのようなメリット・デメリットが発生するのか、それらについて、用途毎の違い等も含めて詳しく解説します。

避難安全検証法の主なメリット・デメリット

避難安全検証法の主なメリット

階避難安全検証法

全館避難安全検証法関連

設計自由度の向上

イニシャルコストの削減

ランニングコストの削減

避難安全検証法の主なデメリット

告示の解釈や計算が非常に複雑で手間が掛かる。

そのため、豊富な実績と経験に基づいて業務を行う当社の避難安全検証コンサルティング
ご活用することをおすすめします。

計画を変更する度に再計算が必要になる。
(テナントの入替や室内レイアウトの変更が多いような物件は注意が必要です。)

当社では、自社開発をした「DiPS」というソフトを使用し、迅速で正確な対応を行うことができます。
プランの変更があった場合でも効率的かつスピーディなレスポンスでご対応いたします。

検証結果によってはクリアさせるために設計変更が必要になる場合がある。
(用途やプランによっては、避難安全検証を適用させた場合の方が扉や排煙設備等が増える場合もあります。)

用途による違いについては、下記の「用途別のメリット・デメリット」を参照下さい。
各物件毎にどのような対策が想定されるかをお知りになりたい場合はぜひ簡易検討をご活用ください。

用途別のメリット・デメリット

物販店舗
工場・倉庫・物流センター
事務所
劇場・興行場
集合住宅・ホテル
病院・児童福祉施設
改修工事(参考)

物販店舗

評価:◎ (極めて有効)

効果的な適用除外項目

メリット

デメリット

参考事例

工場・倉庫・物流センター

評価:◎ (極めて有効)

効果的な適用除外項目

メリット

デメリット

参考事例

事務所

評価:○ (有効)

効果的な適用除外項目

メリット

デメリット

参考事例

劇場・興行場

評価:△ (ケースによっては有効)

効果的な適用除外項目

メリット

デメリット

参考事例

集合住宅・ホテル

評価:× (あまり有効ではない)

メリット

デメリット

病院・児童福祉施設

評価:- (避難安全検証法(ルートB1)は適用不可)

ルートB1では自力で避難することが困難であると考えられる用途の場合は、検証法が適用できません。
ただし、ルートB2では適用できる可能性があります。

改修工事(参考)

評価:○ (有効)

メリット

デメリット

参考事例

あーかいぶphp 避難安全検証法とは

当社では、建物の新築時や改築時に自由度を高めるために活用される避難安全検証法に関するコンサルティングを行っています。こちらのページでは、避難安全検証法に関する内容をご説明します。

避難安全検証法とは

平成12年6月の建築基準法の改正に伴い、建築物の避難安全に関して従来の仕様規定に加えて新たに性能規定が導入されましたが、その性能規定の手法の一つが「避難安全検証法」になります。
避難安全性能を有していることが確認できれば、建築基準法の避難関係規定の一部を適用除外することができ、イニシャルコスト・ランニングコストの削減や設計自由度を確保した計画を行うことが可能になります。

設計の自由度が向上

従来用いられていた仕様規定ではなく、避難安全検証法に沿った性能規定だと、どのくらい自由度を確保した設計ができるのでしょうか。こちらではその具体例を2つご紹介します。

排煙窓は什器のレイアウトの制約になってしまうことがよくあります。
また定期的にメンテナンスを行い、報告する義務もあります。
そのような排煙窓を無くすことでレイアウト自由度の向上や、メンテナンスコストを抑えることができます。
更に排煙垂れ壁を減らすこともできるため、すっきりした空間を実現することができます。

規定通りに出入口を設置しても、出入口の前に物が置かれてしまうと、結局火災が起きた際などに避難口として使うこともできず、非常時に混乱を招きかねません。
このように機能していない出入口を減らすことで、すっきりした設計を実現することができます。

 

避難安全検証法によって適用除外される規定

 

項目 規定の概要 区画避難安全性能を有するもの 階避難安全性能を有するもの 全館避難安全性能を有するもの
防火区画 112 7 11階以上の100m²区画
11 竪穴区画
12 竪穴区画
13 竪穴区画
18 異種用途区画
避難施設 119 廊下の幅
120 直通階段までの歩行距離
123 1 避難階段の構造
第1号 耐火構造の壁
第6号 防火設備
2 屋外避難階段の構造
第2号 防火設備
3 特別避難階段の構造
第1号 付室の設置
第2号 排煙設備の設置
第12号 付室などの面積
第10号 防火設備
第3号 耐火構造の壁
124 1 物品販売業を営む店舗における避難階段等の幅
第2号 階段への出口幅
第1号 避難階段等の幅
屋外への出口 125 1 屋外への出口までの歩行距離
3 物品販売業を営む店舗における屋外への出口幅
排煙設備 126-2 排煙設備の設置
126-3 排煙設備の構造
内装制限 128-5 特殊建築物等の内装(第2、6、7項および階段に係る規定を除く) 自動車車庫等、調理室等

避難安全検証法の概要

避難安全検証法には、区画避難安全検証法階避難安全検証法全館避難安全検証法があります。この中で、告示(509510511号)で定められた計算方法を用いるものをルートB1、告示(474475476号)で定められた計算方法を用いるものをルートB2と呼び、告示で定められた以外の高度な方法を用いるものをルートCと呼びます。これに対し、従来の仕様基準に適合させる方法をルートAと呼びます。

・ 区画避難安全検証法

適用する対象は「建築物内の区画」であり、区画避難安全性能が満たされれば、その当該区画のみ一部の規定を除外することができ、ルートBの検証において、建築基準法施行令第128条の7及び令和2年国土交通省告示第509号・令和3年国土交通省告示第474号に定められた方法に基づいて行われます。
この手法は令和2年の法改正に伴い追加された検証法の種類になります。

・ 階避難安全検証法

適用する対象は「建築物の一つの階」であり、階避難安全性能が満たされれば、その当該階のみ一部の規定を除外することができ、ルートBの検証において、建築基準法施行令第129条及び令和2年国土交通省告示第510号・令和3年国土交通省告示第475号に定められた方法に基づいて行われます。
詳細な計算方法は、「2001年版避難安全検証法の解説及び計算例とその解説」の内容に基づいて行われます。ただし、ルートCの場合は大臣認定を取ることで、それらの内容と異なる手法を用いることもできます。

※同じ建物内であっても、ある階はルートBで検証を行い、それ以外の階はルートAやルートCで検証を行うことは可能です。同様に、ある階は区画避難安全検証法で検証を行い、それ以外の階は階避難安全検証法をで検証を行うというようなことも可能です。ただし原則として同フロア内で異なるルート(一部分だけをルートAやルートCとする)を混在させることはません。

・ 全館避難安全検証法

適用する対象は「建築物全体」であり、全館避難安全性能が満たされれば、建築物全体において一部の規定を除外することができ、ルートBの検証においては、建築基準法施行令第129条の2及び令和2年国土交通省告示第511号・令和3年国土交通省告示第476号で定められた法令に基づいて行われます。

※全館避難安全検証を行う場合は、必然的に全ての階が全館避難安全検証の対象となります。

ルートA仕様規定 従来の避難関係規定(仕様基準)に適合させる方法
ルートB1性能規定 告示(509号510号511号)で定められた避難安全検証法を利用する方法
ルートB2性能規定 告示(474号475号476号)で定められた避難安全検証法を利用する方法
ルートC性能規定 高度な検証法を用いるため、国土交通大臣の認定が必要な方法

避難安全検証法(ルートB)の適用範囲

(1)主要構造部の制限

主要構造部が耐火構造、準耐火構造であるか、若しくは不燃材料で造られた建築物に限定されている。

(2)計算方法による制約

ルートB1においては、自力で避難することが困難である用途の階または建築物(病院、診療所および児童福祉施設など)は適用対象外としている。

「避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説」に記載されていない用途の建築物は、一部の確認申請機関によっては、ルートBを適用できない場合があります。

提出時期

避難安全検証法の計算書は、確認申請時の添付図書となるため、確認申請時にあわせて、提出する必要があります。(計画変更届や確認申請が必要な増・改築工事の場合も同様です。)

※避難安全検証法を適用した物件の場合、計算結果が変更になってしまうものは、原則として計画変更になります。
一般的に軽微な変更としている変更内容でも、軽微な変更となるか計画変更となるかの判断は審査機関に確認が必要です。

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